札幌座は、北海道演劇財団(理事長 斎藤歩)の中にある劇団で、北海道で最も活動的で、北海道の演劇シーンを長年に渡り牽引してきました。
「亀、もしくは・・・。」は、1995年に初めて札幌で上演され、その後何度も繰り返し再演されることになる優れた作品です。作者はカリンティ・フリジェシュというハンガリーで有名な作家で、それを斎藤歩氏が分かりやすく改変し、演出したものです。作家の故郷ハンガリーでもこの舞台は上演され、日本人による演出についても、理解は共有され、大好評を博しました。またソウルでも上演され、札幌座の地位を確固たるものにしました。斎藤歩氏は、現在闘病中ではありますが、今回の美瑛公演には出演されていて、非常に貴重なものとなります。公演時間は50分ほどで、大変見やすいものですが、とはいえ精神病棟で展開する物語は、一瞬精神病棟は、客席側なのか、それとも舞台の方なのか、と疑問が浮かび、観客の方が精神病棟にいるのではないかとの倒錯した感覚が生じるシーンがあります。またホモセクシャルの問題や、拘束衣を着せられるとかえって気分が落ち着くね、安心するねなどと人間の自由の難しさについても踏み込んでいきます。でも最後は希望が浮かびあがる無数に星の輝く空がはっきりと見えてきます。
世界で公演を重ね、評判を呼び、絶賛されてきた作品が美瑛に登場します。期待を越えた作品になることでしょう。
今回、美瑛フェスティバルを開催するにあたり、財団理事長の斎藤歩氏には感謝しきれないほどお世話になりました。森崎博之氏の所属する事務所オフィスキューを紹介していただいたほか、ギターリスト山木将平氏を紹介してくれたのも斎藤氏です。美瑛では見つけられない舞台のテクニカルスタッフ(照明スタッフや音響スタッフ)と繋いでくれたのも斎藤氏です。
公益財団法人北海道演劇財団は、1997年に設立され、その後2001年に札幌で専用劇場シアターZOOをオープンさせると共に、所属劇団を設立、2012年から札幌座と改名して活動をし続けています。現在の札幌座の芸術監督は斎藤歩氏を引き継ぎ、清水友陽(ともあき)氏が就任。また北海道演劇財団の理事長は斎藤歩氏です。清水氏のワークショップも6月24日から26日まで開催されます。
今回、美瑛での「亀、もしくは・・・。」の公演のために、札幌座は1995年の初演当時の役者を特別に招聘してくれました。ただ、一人だけは揃わなかったので、柄本明氏が率いる「東京乾電池」の役者、川崎勇人氏を起用してくれることになりました。なお、斎藤歩氏は6月12日のシンポジウムにもパネリストとして登場していただいています。北海道の芸術や演劇の現状や将来像について語ってくれるでしょう。こちらもご期待ください。