第一回 美瑛フェスティバル

2024.6.12|水|-26|水|

第1回美瑛フェスティバル 
ディレクターズメッセージ

美瑛フェスティバル ディレクター 
市村 作知雄

美瑛フェスティバルを開催します。
なぜやるのか、今なぜ美瑛でなのか、様々な疑問があるのは承知しています。
私は、長い間アートという分野で仕事を続けてきました。何か少しでも創作し、発表する機会が見つかるのであれば、世界中どこへでも出向き、創作し、発表しようとするのがアートやアーティストの特徴です。私たちはアートの専門家ではあっても、美瑛のまちづくりの専門家ではないし、まだ美瑛と関わって2年ほどしか経ってない私たちが<まち>についてとやかく言う立場にはありませんが、しかし私たちのやろうとしていることが、結果として町のためになるのであれば、こんな嬉しいことはありません。
では、なぜ美瑛でやろうとしているのか。それは美瑛という町、そこに住む人々と互いに協力し合い、共感し、一緒にできることが<ある>という確信が持てたところにあります。私は東京で大きなフェスティバルを立ち上げ、運営してきましたが、東京という巨大都市では、町の人々との距離はとても遠くて、互いの顔を認識することもあまりありません。したがって、作品を創る人は創る人、見る観客は観客と互いに役割ができていて、相互の関係は希薄になっていきます。美瑛では、それとは違った創り方ができると思いました。いや既にその方向で走り出しています。私たちにとっては大きなチャレンジになります。
人は多様な能力を兼ね備えています。自分の中に今までになかった自分を発見することができれば、大きな喜びです。そのような多様な能力に合わせて、いろいろな活動場所ができればいいと思います。アートは、町の人々に今までになかったもう一つの活動場所を作り出していきますが、それと同時にアートもアート自身が囚われてきた狭い枠を打ち破り、もっと広い社会とつながり、ついにはアートをアートから解放する、これが今回のプログラムのもう一つのねらいになります。美瑛アートフェスティバルとしないで、美瑛フェスティバルとした理由もそこにあります。
アートが作り出せるのは、想像力だと私は思います。高齢者の問題も環境問題も子育ても自然災害も、社会的に大きな問題です。そのようなことに関心を寄せることができるようになるのは、他人の痛みや他人の置かれている環境を自分の痛みとして感じることができる想像力が必要です。アートはそのような想像力を生み出す能力を育成することができます。作品を見て、この作者はどのような考えや気持ちで、これを創ろうとしたのだろうか、それは想像力の問題です。その上で自分とは考え方が違うなとか、共感するなとか、人々と話しをするところにアートの楽しみがあります。自分とは違った考えがあるのだと、発見することは、驚きであり、同時に喜びです。そのようなところから互いへの尊敬や敬意が生まれていきます。尊敬と敬意からは、いさかいや戦争ですら起きることはありません。

第一回美瑛フェスティバルを開催したいと思います。